ペタンク夜話(その5)べべ−ル・ド・カーニュ再び

ペタンク夜話で伝説のプレイヤー達を紹介したところ好評で、ぜひ続編をと言う要望が多い。

話の出処は夕食時のRaluyさんの思い出話だから、昨夜も誰か有名なプレイヤーの逸話を紹介してくれと頼んだところ、またもべベール・ド・カーニュBébert de Cagneの話になった。

彼はRaluyさんが一番敬愛するプレイヤーであり、Raluyさんの著書『PÉTANQUE 』の中でプレイヤーを紹介する章があるが、そこで一番に紹介されているのがべベール・ド・カーニュだ。
どうしても彼の話が一番多くなる。

『PÉTANQUE』クロード・ラリュイ著(hachette社)

またべベールか!と言わずに、もう一話聴いてもらいたい。

この話を聞けば何故Raluyさんが彼を尊敬するのかわかるのと思う。

《ある大会での出来事》

ダブルスの試合でべベールBébertのチームは10対11で負けていた。

相手の投球は終わり、べべ−ルは最後の2投のうち最初のポワンテで得点した。その時のテランは次のようだった。

ビュットの両脇の黒ブールが相手チーム。ビュットの手前の白ブール2個はべベールのチーム。ビュットの先にある白ブールはべベールが今ポワンテした。

さて、あなたがべベールならどうするか?
常識的なプレイヤーならもう一度ポワンテして得点を2点にし、12対11と有利にして次のメーヌを迎えるだろう。

しかし、テランを見ていたべベールは最後の一投をティールすると言う。それもビュットの先にある自分のブールをティールすると言い出したそうだ。

パートナーは驚き、反対した。
何故なら。彼のティールが彼のブールを弾き出せば相手が2得点して10対13で試合終了となる。
カローになったとしても1得点のままだ。ティールすることになんの意味があるんだ!とパートナーは言った。

しかし、べべ−ルは頑として譲らない。

とうとうパートナーは泣き出しそうになって、近くの街灯にしがみついて天を仰いだそうだ。

さて、そうしてべベールの投げたティールはどうなったのか?

彼の投げたブールは猛烈な逆スピンでビュットの先にある彼のブールの真芯に当たり弾き出してカローになり、
そして逆スピンが効いて後ろに転がりビュットを伴って手前にある味方の2個のブールのところまで戻って来たという。

こうして、3得点し。13対11で彼のチームは勝った。

確かに素晴らしいプレーだが、皆さんどう思われましたか?

常軌を逸している?そう思われたでしょう。

私も同じ意見を言いました。

Raluyさんは頷きながら私の顔を見て、

”しかし、それが彼の世界だったよ!
 C’était le monde de Bébert ! ”

と感慨深げに締めくくったんです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です