ペタンク夜話で伝説のプレイヤー達を紹介したところ好評で、ぜひ続編をと言う要望が多い。
話の出処は夕食時のRaluyさんの思い出話だから、昨夜も誰か有名なプレイヤーの逸話を紹介してくれと頼んだところ、またもべベール・ド・カーニュBébert de Cagneの話になった。
彼はRaluyさんが一番敬愛するプレイヤーであり、Raluyさんの著書『PÉTANQUE 』の中でプレイヤーを紹介する章があるが、そこで一番に紹介されているのがべベール・ド・カーニュだ。
どうしても彼の話が一番多くなる。
またべベールか!と言わずに、もう一話聴いてもらいたい。
この話を聞けば何故Raluyさんが彼を尊敬するのかわかるのと思う。
《ある大会での出来事》
ダブルスの試合でべベールBébertのチームは10対11で負けていた。
相手の投球は終わり、べべ−ルは最後の2投のうち最初のポワンテで得点した。その時のテランは次のようだった。
さて、あなたがべベールならどうするか?
常識的なプレイヤーならもう一度ポワンテして得点を2点にし、12対11と有利にして次のメーヌを迎えるだろう。
しかし、テランを見ていたべベールは最後の一投をティールすると言う。それもビュットの先にある自分のブールをティールすると言い出したそうだ。
パートナーは驚き、反対した。
何故なら。彼のティールが彼のブールを弾き出せば相手が2得点して10対13で試合終了となる。
カローになったとしても1得点のままだ。ティールすることになんの意味があるんだ!とパートナーは言った。
しかし、べべ−ルは頑として譲らない。
とうとうパートナーは泣き出しそうになって、近くの街灯にしがみついて天を仰いだそうだ。
さて、そうしてべベールの投げたティールはどうなったのか?
彼の投げたブールは猛烈な逆スピンでビュットの先にある彼のブールの真芯に当たり弾き出してカローになり、
そして逆スピンが効いて後ろに転がり、ビュットを伴って手前にある味方の2個のブールのところまで戻って来たという。
こうして、3得点し。13対11で彼のチームは勝った。
確かに素晴らしいプレーだが、皆さんどう思われましたか?
常軌を逸している?そう思われたでしょう。
私も同じ意見を言いました。
Raluyさんは頷きながら私の顔を見て、
”しかし、それが彼の世界だったよ!
C’était le monde de Bébert ! ”
と感慨深げに締めくくったんです。