さて今夜は、Raluyさんの話ではなく、今読んでいるフランス漫画『PASSION…PÉTANQUE』の中から有名なエピソードを紹介します。
ペタンクの試合はメンタルな要素が大きいので相手を心理的に動揺させて試合を有利に運ぼうと考える選手が出てきます。
もちろんこれはマナー違反、ルール違反ですから、今日では少なくなっていますが、昔は露骨に行われていたようです。
今でも語り伝えられる有名な神経戦は、1977年にクールヌーブCourneuveで開催された全仏選手権トリプルスの準決勝でした。
古代の野外闘技場 Arèna du théatre de Verdureで開催されたこの大会の準決勝は、ルボーLeveau、パオンPaon、マッテイMattei組とマルコ・フォヨMarco Foyot、メリスMélis、オーテューAuthieu組の対戦となりました。
この中で現在もプレーしているのはマルコ・フォヨMarco Foyotだけ。
これは彼が24歳のときの話です。
準決勝は11対9でマルコ・フォヨ組優勢。
迎えたメーヌはルボー組が4投目でようやく得点。
しかしマルコ・フォヨ組は残り4球あり、残り2球のルボー組は敗色濃厚でした。
マルコ・フォヨがティールしようとサークルに入ったその時です。
”おい!サークルを踏むんじゃないぞ!Ne mord pas le rond!”
とルボーが大声を出してサークルに入り、マルコ・フォヨの投球動作を遮りました。
これに怒ったメリスが、
”口出しするな!”
とルボーを押し戻しました。
この二人の激しいやり取りに動揺したマルコ・フォヨはティールを2球続けて失敗します。
続くオーテューの投球も失敗して味方の球を打ち出してしまいました。
ルールを盾に相手を動揺させたルボー組に対し観客は激しい野次を飛ばしますが、マッテイは落ち着いて残りの2球を見事なカローで決め4得点。
この試合を勝利しました。
さて、この事件は今だに審判の議論の対象になっているようです。
ルボーの行為はルールの適用を厳格に求めただけで非難されるべきではない、という意見もありますが、彼がマルコ・フォヨの投球直前にそれを行ったことは投球妨害に当たると言う意見もあります。
事実、その時審判は何も介入しなかったのですが、メリスがルボーを押し戻し、両者が紛糾した時点で審判は試合に介入せざるを得ませんでした。
早い段階で審判が警告していれば紛糾することもなく、マルコ・フォヨも動揺しなかったかもしれません。
さて、皆さんはどう思われますか?
それにしても、そんなことで動揺するとは今のふてぶてしいマルコ・フォヨからは想像もできませんね。
当時はまだ彼も若かったということでしょうか?
両チームで争いがみられた出来事は日本でも新ルールができる前は、たびたび見られました。サークルを踏んで投げたとか、ボールが落ちる前にサークルから足が出たとか、時間を延ばすためにわざとゆっくり歩測したとか、遠近がはっきりしているにもかかわらずメジャーで測ったとか・・・・。
現在はこういうトラブルは審判にアピールすることが守られるようになりました。
この漫画の大会で、私が審判だったとしたら、次のような判定をします。(サークルを踏んだか、踏みそうだったのかを私がしっかりと見ていなかった場合)
これは投球する前の出来事ですね。
ア 事実として踏んでいた場合 フォヨの違反
イ 事実として踏んでいなかった場合 ルボーの違反
と裁定しますが 選手双方の主張が異なった場合は まずフォヨとルボーのアピールをきちんと聞きます。そして
① フォヨがサークルを踏んだことを認めた場合は、
フォヨのフェアな精神をたたえ 口頭で注意して試合を続行さ
せる ペナルティは与えない
② 水掛け論になった場合は、今後はお互いにフェアなプレイを
心掛けるよう注意し、昂った気持ちを落ち着かせてから試合
を続行させる。ペナルティは与えない
双方がある程度納得し、少し間をおいてから試合続行していたら フォヨの勝利で終わったことでしょう。
現在は、審判は違反行為に対する罰則カードを携帯していますが、機械的に与えるのではなく、双方が納得する判定をすることが審判の役目と考えます。トラブルがあった場合 試合終了後、双方の選手にスポーツマンシップ、フェアプレイ精神について審判として話したいものです。