4日に帰国して2週間以上が経過した。時差ボケも回復したのでフランス滞在話はこれで最後にしたい。
パリから南東に電車で1時間。ブルゴーニュ地方の小さな村セルジーヌSerginesにCIEP(国際ペタンク指導協会)の本部があり、そこで毎月4日間のペタンク講習stagesが開催される。
私は昨年今年と計4回参加したが、参加者は毎回5〜7人程度、私を含めて3人だけの時もあった。
私は初めての日本人参加者だったので、講習の内容を日本のブログ読者の方に伝えようと、写真を撮ったり解説してきたりしてきた。
しかし、まとまりのない散漫な解説だったので、ここらでなにかポイントになる内容を集中的に取材してブログに書こうと思った。
前回解説したティール時の目標の狙い方の講義はCIEPの投球思想をよく表す内容だから、それを集中的に取材しようと思った。
講師のジョルジュGeorgeは人体の2つの軸、肩の付根と両目の中心から目標球に向けて糸を2本張り、2つの軸のブレを幾何学的に説明しようとしていた。
私はスマホのカメラを彼に向けた。
その時だった、
CIEP代表のラリュイRaluy氏が私の方に歩み寄り、厳しい顔つきで、撮影を止めるように言ってきた。
”何故撮影が駄目なんですか?”と私は言った。
”講義をブログで紹介すれば日本の読者にCIEPの宣伝ができますよ!”
だがラリュイ氏は撮影を認めない。
”駄目だ。講義の内容が外部に漏れるとそれを真似するやつが出て、CIEPが損失を蒙る!”
stagesの最中だったので私はその場は引き下がった。
stagesの4日目の最終日の夜、私はラリュイRaluy氏とコーチのピエールPierreと3人で夕食をする機会があった。
その席で私達3人は講義の撮影に対するCIEPの秘密主義を議論した。
ピエールとラリュイ氏は同意見だ。
”講義の内容が公開されると、他の企業にノウハウを盗まれる。
大手ブール製造のO社は他の企業のノウハウを盗んで成長した。彼らはCIEPのノウハウも狙っているんだ。”
と主張する。
私は
”ノウハウを保護しすぎて市場の開拓に失敗した企業も多い。”
と反論し、
”CIEPのようなペタンクの技術指導をする組織は他に存在しないが、講義内容を外部に紹介しないから認知度は低く、参加者も少ないままだ。
講義内容の一部を写真や動画で一般に公開すれば、それを真似る人も出てくるだろうが、認知度が上がり参加者はもっと増えるのではないのか?”
と私の考えを延べた。
議論は白熱した。
私がCIEPの認知度が低いことを主張した時、ラリュイ氏はムッとしたように見えた。
しかしそれは本当だ。日本でCIEPは殆ど知られていない。
”お前の言いたいことはよく分かる”
とラリュイ氏は最後に私に語りかけた。
”だけど、ペタンクのことは俺がプロだ。
今まで人のノウハウを盗む連中にどれだけ損をさせられたことか。
だから、ここは俺のやり方でやる。”
結局議論は噛み合わなかった。
ただ、ラリュイRaluy氏が発案したポータブルサークルや室内用ブールのアイデアが第三者に利用されたことがあり、彼が悔しい思いをしたことは私も知っている。
議論はここで終わりにした。
しかし、私のような一参加生に対し、よくここまで議論してくれたと彼らに感謝もした。
ところで、フランスにしばらく滞在すると分かるのだが、フランス人は物凄い議論好きだ。
近所の人達の何気ない世間話も議論のように白熱し延々と続く。
テレビではいつも討論番組をやっていて、延々と何時間も討論が続くのだ。
フランス人はいつも楽しんで議論に応じてくれるから私は好きだ。
だから私もフランス人に議論をふっかけるのは友情の証のようなものだと思い始めてきた。
日本でこんなことをしたら友達はいなくなってしまう。
まあ、こうして私は友達を失くしたのだが、、、
さて、この議論、皆さんはどう思われましたか?
議論好きな日本人の方がいれば是非議論に加わってください。
自分の考えや行動は、全ての人に与えられた権利で、議論していく事で、人となりが、解る
議論出来るとは
お互いに認めていると思う
議論により 多面性がわかり
自分の考えの及ばない思考がわかり
個性ではないか
議論=お互い認め、思い伝え分かち合い
素敵ではないですか
三宅さん
お帰りなさい
長野さん、初コメントありがとうございます。
また、いつもfacebookやブログを読んで頂きありがとうございます。
またみんなで集まって語り合えると嬉しいですね。
幹事期待しています。
おはようございます。
人でも組織でも「秘密」を持つと いやな「重さ」を感じる。さらに、この「重さ」を避けようと、より策を弄することになり、益々重くなる。だから「秘密」は持たない方がよいに決まっている。
「秘密」にしようとするのは損得、利害を考えるからだ。CIEPも ただそれを考えてのことと思われる。
日本でも公式のペタンク講習会で「動画や写真を撮らないでください」と言われることが今でもある。これも「主義」ではなく損得のみだ。「この技術はオレが見つけたものだ。ただでは教えられん」ということだ。おいしいウナギのたれの作り方が企業機密で教えてもらえないことなども同じですね。 (笑)
これらは「主義」ではなく強欲です。
「秘密」を守り、自分たちだけの満足感をもつことよりも、多くの人々に開放した方が尊敬され、自分たちにも組織にも今まで以上にメリットになると思うのですが、、、、難しい命題ですね。
amical氏の指摘のように「秘密」がなくなれば ペタンクももっと普及すると思います。フランス滞在でのいろいろな体験報告がうれしかったです。
古木翁コメントありがとうございます。
セミナーなどで撮影禁止と言われるといつも2つの意味でうんざりします。
ノウハウというものが分かってないな、と感じてしまいます。
1つは、いくら素晴らしいノウハウでも時の経過とともに陳腐化します。
もしノウハウを秘密にすると外部のノウハウも吸収しづらくなります。人に自分のノウハウを教えない人には誰も別のノウハウを教えません。そして彼のノウハウは成長の機会を失い陳腐化していくのです。
ノウハウは公開し他のノウハウと競合させることで鍛えられ成長し完成していくものだと思います。「門外不出の秘伝」と呼ばれるものは仰々しいだけで内容を聞くと陳腐なものが殆どだとは思われませんか?
もう一つは、ノウハウを安易に盗用することしか考えない人がいることです。
優れたノウハウは優れた知的バックグラウンドがあって初めて生み出されるものです。
結果のノウハウだけを安直にコピーしても、元のノウハウは上回れませんし、バックグラウンドがなければ次の新しいノウハウを生み出すことも出来ません。
結局、彼のコピーしたノウハウは二番煎じなうえにあっという間に陳腐化してしまいます。
ノウハウに対し敬意を払い謙虚にそれを学ぶことで知的なバックグラウンドが豊かになり、そのノウハウを深く理解することが出来、また新たなノウハウを生み出す可能性も出てくるのだと思います。